メールの署名や住所、いつもの挨拶のように毎回同じ文面なら、Macの辞書登録で十分です。最初から入っていて無料で動きますし、登録数が増えて管理したくなったら、EspansoやTextExpanderといったテキスト展開ツールもあります。
ただ、返信が画面のメッセージ次第で変わるなら、辞書登録では間に合いません。Gmailの長文メールやLINEへの返信は、相手の言葉によって毎回中身が変わるからです。決まったフレーズを呼び出すより、その場で文脈をAIに渡して書いてもらうほうが自然です。
私が開発しているAtAtは、文字を入力できる場所ならどこでも @@ と打つだけで、その場に入力枠が開き、カーソル位置にAIの回答を届けるMacアプリです。
AtAtはテキスト展開ツール(Text Expander)ではありません。短い文字を登録フレーズに自動展開する機能は持っていません。私なら、住所や署名にはMacのユーザ辞書を使い、画面の文脈に合わせた返信にはAtAtと、両方を使い分けます。
なお、他社ツールの情報は各開発元の公式ページを2026年11月1日に確認した内容をもとに記載し、リンクを張っています。
Macで辞書登録(ユーザ辞書)するやり方
macOSで定型文や変換しにくい単語を登録する手順はシンプルです。Appleサポートのユーザ辞書ガイドの手順は次のとおりです。
- アップルメニュー >「システム設定」をクリックします。
- サイドバーの「キーボード」をクリックします。
- 右側にある「ユーザ辞書」をクリックします。
- 追加ボタン(「+」)をクリックします。
- 「置き換えるテキスト」に読みを入力し、「置き換え後の語句」に変換後の単語や定型文を入力して「追加」をクリックします。
- 「完了」をクリックします。
アプリで作業中なら、メニューバーの「編集」>「自動置換」>「自動置換を表示」を選び、「テキスト設定」をクリックしても同じ画面が開きます。
たとえば「置き換えるテキスト」に おせ、「置き換え後の語句」に お世話になっております。 と入れておきます。「おせ」と打って変換するだけで長い挨拶文が出ます。メールアドレスや電話番号の登録にも向いています。
なお、Appleのヘルプには2点記載があります。ひとつは、日本語や中国語の入力ソースを使う場合、テキストの置換は「ユーザ辞書」に含まれる点。もうひとつは「テキストの置換、スマート引用符、スマートダッシュ、およびスマートリンクが使用できないアプリもあります。」という点です。どのアプリが使えないのかは挙げられていません。
定型文が増えてきたら:テキスト展開ツールと「AI」
登録フレーズが増えて管理が難しくなったり、WindowsやLinuxでも同じ短縮文字を使いたくなったら、テキスト展開ツールの出番です。
代表的なオープンソースツールに Espanso があります。macOS、Windows、Linuxで動作し、設定はYAML形式で trigger と replace を書きます。
matches:
- trigger: ":br"
replace: "Best Regards,"OSをまたいで同じ設定を使えるのが特徴です。
一方、TextExpanderは定型文の展開にとどまらず、AIの導入を進めています。TextExpander公式ブログの解説によると、カーソル周辺のテキストをAIが読み取り、合うスニペットを提案したり、なければ新しい文章を下書きしたりする機能が紹介されています。提案されたテキストは、使う前やライブラリに保存する前に自分で確認できます。
プレビューはまずChrome拡張機能から始まり、デスクトップアプリへの対応が続く予定で、初期は英語のみとされています。定型文ツールも、AIで文脈に合わせる方向を探り始めています。
比べてみる
それぞれの道具には得意な領域と役割の違いがあります。表に整理してみます。
| ツール | 入力するもの | 出てくるもの | 画面の内容を見るか | 始めるのにかかる費用 |
|---|---|---|---|---|
| Macのユーザ辞書 | 短い読み(例: おせ) | 登録済みの定型文 | 見ない | 無料(macOSに標準搭載) |
| Espanso | トリガー文字列(例: :br) | 登録済みの定型文 | 見ない | 無料(オープンソース) |
| TextExpander | スニペットの短縮語(AI提案あり) | 登録文またはAIによる下書き | AIがカーソル周辺の文字を読む | 料金は公式サイト参照 |
AtAt(@@) | @@ と指示(日本語でOK) | 画面文脈を踏まえた回答 | スクリーンコンテキストONで参照 | 14日間のプレビュー(その後 @@ にはプラン要、料金詳細) |
返事が画面の内容しだいなら、@@ と打つ
毎回同じ文面なら辞書登録で十分ですが、実際の連絡では相手の言葉に応じて返信を作ることが大半です。AtAtが役立つのはまさにその場面です。
シーン1:GmailやLINEで長い連絡に返信する
GmailやLINEで長いメッセージを受け取ったら、返信欄でそのまま @@ と打ちます。
打った瞬間に @@ が消え、その場に入力枠が開きます。
画面コンテキスト(Screen Context)がオンで、対応するAIプロバイダを使っていれば、開いているウィンドウのスナップショットが小さなタイルとして自動添付されます。送信前に外すこともできます。
あとは普段の言葉で指示を入れるだけです。
「木曜でOKと返して、予算のことも聞いて」
Returnキーを押すと、返信はプレビューカードに届きます。問題なければ Tab を押すだけでカーソル位置に挿入されます。
「もっと短くして」と追加で指示することもでき、Tab を押せば最新の回答が入ります。途中でやめたければ Esc で閉じられます。
なお、日本語の変換中に誤って @@ が発動したり、入力中の文字が欠けたりすることはありません。
シーン2:Slackや「メモ」の荒削りな下書きを整える
Slackや「メモ」の荒削りな文章を選択します。対応アプリなら、選択テキストの脇にアクションバーが現れます。
「Ask @@」をクリックすると選択テキストが入力枠に入り、「ちゃんとしたメッセージにして」と頼んで「Insert」を押せば、整った文章に置き換わります。文法や誤字脱字だけを直したいときのために、最初から「Fix Grammar」というアクションも用意されています。
手元のAIをそのまま使う
AtAtは独自のクラウドサービスにプロンプトを送る仕組みではありません。普段使っているAIをそのまま接続して動かします。
Claude Code(claude)やCodex(codex)などのコマンドラインエージェント、手持ちのAPIキー、ローカルのOllamaモデル、macOS 26以降のSiri AIに対応しており、プロンプトがAtAtのサーバーを経由することはありません。
文章の入力中に ⌥⇥ を押すと、カーソルの後ろに続きの言葉を書き出す「TabTab」機能もあり、Tab でそのまま確定できます。
定型文をAtAtに置いておくこともできる(ただし展開ではない)
AtAtは略語を自動展開するツールではありませんが、よく使う定型文を手元に置いて呼び出す使い方はできます。
定型文の保存は、@@ の入力枠に書いて ⌥Return を押すだけです。AIを動かさず、そのまま「お気に入り(Favorites)」に保存されます。「Add Favorite」ボタンから直接追加もできます。
使うときは ⌘⇧V を押します。
シェルフが開き、直近最大200件のクリップボード履歴とお気に入りが並びます。「Favorites」タブでは先頭が選択されているので、Returnキーを押すだけでカーソル位置に貼り付きます。絞り込み検索も可能です。
略語の自動展開ではなく、一覧から選んで貼る操作感です。
クリップボード履歴とお気に入りは、14日間のプレビュー期間が終わってもプランなしで無料で使い続けられます。
辞書登録のほうがいい場面
すべてをAIに任せる必要はありません。辞書登録のほうが向いている場面もあります。
- 毎回同じ文字列を出したいとき:電話番号、住所、銀行口座、メールアドレスなどです。1文字でも変わると困る情報ですし、待ち時間もなくモデルも介しません。決まりきった文字にAIを呼ぶ理由はありません。
- チームで文面を揃えたいとき:TextExpanderのブログ記事では、組織内でのテンプレート共有や承認フローについて触れられています。会社で文面を統一するなら、そうした専用の仕組みを検討するのが良さそうです。
動作環境や条件も異なります。Macのユーザ辞書はすべてのMacで最初から動きます。AtAtはAppleシリコン搭載のmacOS 15以降が必要で、14日間のプレビュー終了後にAI機能を使うにはプランが必要です。
決まりきった文字はMacのユーザ辞書、文脈を汲んだ返答はAtAtと、役割を分けるのが快適です。
どれを選ぶか
作業に合わせて使い分けるのがおすすめです。
- 住所や電話番号、決まった挨拶:まずはMacのユーザ辞書が手軽です。標準機能でそのまま使えます。
- 定型文をファイルで管理したい:設定をコードで持てるEspansoが向いています。
- 相手の文脈に合わせた返信をその場で書きたい:Mac の AI アシスタントの AtAt を試してみてください。入力欄で
@@と打つだけで、画面を見ながら返信を作れます(疑問点は FAQ もどうぞ)。 - よく使う文面を履歴と一緒に呼び出したい:AtAtの「お気に入り」と「クリップボード履歴」が便利です。プランなしでも使えます。
よくある質問
Macで辞書登録するには?
アップルメニューの「システム設定」>「キーボード」>「ユーザ辞書」から登録します。追加ボタンを押して、置き換えるテキスト(読み)と置き換え後の語句を入力し、「追加」をクリックして「完了」を押せば完了です。
単語登録の設定画面はどこから開く?
アップルメニューから「システム設定」を開き、サイドバーで「キーボード」を選んで「ユーザ辞書」をクリックすると開きます。また、対応アプリのメニューバーで「編集」>「自動置換」>「自動置換を表示」を選び、「テキスト設定」をクリックしても開けます。
辞書登録した単語が出てこないアプリがあるのはなぜ?
Appleの公式ヘルプには「テキストの置換、スマート引用符、スマートダッシュ、およびスマートリンクが使用できないアプリもあります。」と記載されているだけで、どのアプリが使えないのかは挙げられていません。
無料で使えるAIのテキスト展開ツールはある?
ユーザ辞書やEspansoは無料で使えますが、AI機能はありません。AtAtはアカウントやクレジットカードの登録なしで14日間のプレビューを試せます。プレビュー終了後にAIを呼び出すにはプランが必要ですが、クリップボード履歴やお気に入り機能はプランなしでも無料で使い続けられます。
AtAtは辞書登録の代わりになる?
いいえ、AtAtは短い略語を自動展開するテキスト展開ツールではありません。画面の文脈を読み取ってAIにその場に合わせた文章を書いてもらうツールです。住所や署名のように毎回同じ文章を出すなら、Macのユーザ辞書を使うのが適しています。
自分のClaudeやローカルモデルを使える?
はい、Claude Code(claude)やCodex(codex)といったコマンドラインエージェント、対応プロバイダのAPIキー、ローカルのOllamaモデル、macOS 26以降のSiri AIをそのまま利用できます。プロンプトがAtAtのサーバーを経由することはありません。